蹴ったな、蹴りおったな。神宮の
太刀のつかを叩いて、犬の代りに、吠えている。
「は、は、は、は。……おん犬とは」
またしても、又太郎が嘲笑するので、右馬介は気が気でなく、酒板の下で、その袖を、引っ張った。そして、自分が
「右馬介、おまえは黙っておれ。わしのしたことだ、わしが物申す」
すると、返辞は、足軽頭が奪い取って。
「なに、物申すだと。御献上のおん犬に、土足をくれて、なんの言い条がある」
「ある」
又太郎は、残りの一杯を、ゆっくり飲みほした。
侍童は、私を箱に入れて、宮殿から半時間ほどの道を歩いて、海岸の岩のところへ来ました。私は頼んで下におろしてもらうと、窓を一枚開けて、海の方をじっと眺めていました。そのうち、少し気分が悪くなったので、ハンモックの中で昼寝してみたい、と侍童に言いました。すると、彼は寒気の入らないように、窓を閉めてくれました。私はハンモックの中で、すぐ眠りに陥ちました。
ところで、侍童は私が眠っている間に、まさか危険も起るまいと思って、岩の間へ鳥の卵でも探しに出かけたらしいのです。というのは私が眠る前から、彼は卵を探しまわっていたし、岩の割目から一つ二つ拾い上げている姿を、私は窓から見ていたからです。それはともかくとして、私がふと箱の中で目をさまして見ると、驚きました。箱の上についている鉄の環を誰かゞ、ぐい/\引っ張っているのです。と、つゞいて私の箱は空高く引き上げられ、猛烈な速さで前へ走って行くような気がしました。はじめ私は、ハンモックがひどく揺れて、落っこちそうになりましたが、その後はずっと静かになりました。二三度声を張り上げて呼んでみましたが、誰も答えてくれません。窓の方へ目をやって見ると、目にうつるものは雲と空ばかり、そして私のすぐ頭の上で、何か羽ばたきのような物音が聞えるのでした。
で、私は自分がどんなことになっているのか、わかりかけました。今、一羽の鷲が、私の箱をくわえているのですが、これはちょうどあの亀の子をつかまえたときするように、やがて箱を岩の上に落して割り、私の身体をほじくり出して食うつもりなのでしょう。というのは、鷲はよく臭を嗅ぎつける鳥ですから、たとえ獲物が上手に隠れていても、すぐ見つけ出すので、私が箱の中にいることも、ちゃんともう知っているにちがいありません。
毒を食らわば皿まで 建設業許可 大阪 矢野行政書士法務事務所
御存知のとおり、ボルゴラム
こゝまで彼の話を聞いていると、私はむしゃくしゃしてきたので、
「何だって、みんなは私を罪人にしようとするのか、私はそんなに……」
と言いかけました。
「まあ、黙って聞いていてください。」
と、彼は私を黙らせました。
「私はいつかあなたの御恩になったので、こんなことを打ち明けるのですが、もしかすると、そのために私まで罪になるかわかりません。が、それも覚悟でお知らせするのです。こゝに、その弾劾文の写しを手に入れていますから、今それを読みあげてみましょう。